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デジタルマーケティングに携わるうえで目にすることの多いオムニチャネル。具体的な施策がイメージできなかったり、ほかの似た言葉との違いがわからない方も多いのではないでしょうか。本記事ではそんなオムニチャネルについて網羅的に解説します。
オムニチャネルとは
まず初めに、オムニチャネルの概要や注目される背景、似た言葉との違いについて解説します。
オムニチャネルの意味・定義
オムニチャネルとは、ユーザーと企業の接点をオンライン・オフライン問わず結合させ、ユーザーに購入経路を意識させない販売戦略のことを指します。「オムニ」はラテン語で「すべての」を意味し、「チャネル」はマーケティングにおいて「集客する媒体・経路」を意味します。
例えば、アパレル店に洋服を購入しに行った際、その店舗に求める洋服の在庫がなかったとします。こうしたときに、ECサイトから購入ができたり、商品の受け取りを実店舗でおこなったりと、ユーザーが求めるものを好きな場所や好きな時間に受け取ることができるようにする戦略がオムニチャネルです。
オムニチャネルの市場規模の推移
近年注目を浴びているオムニチャネルですが、ここで実際の市場規模や成長予測を紹介していきます。下図は2020年12月に野村総合研究所が発表したデータです。
画像引用元:野村総合研究所ニュースリリース
このデータはオンライン上の情報から、実店舗・ECサイトを問わず商品やサービスを購入した人のデータをもとにしています。またここでのオンライン上の情報には、ホームページやECサイトだけでなく、SNSを介した友人との交流や比較サイトによる情報も含まれています。
2020年のオムニチャネルコマース市場は、コロナ禍による旅行、外食、理美容などのサービス業が打撃を受けたことによって成長に停滞がみられました。しかしながら、コロナ禍は今後の消費行動のオンライン化を後押しすると考えられ、2026年には80.9兆円への成長が見込まれています。
注目の理由・背景
ここでは、オムニチャネルが注目される理由を2つの観点から説明します。
消費者行動の変化
オムニチャネルが注目を浴びている理由の1つとして消費者行動の変化があげられます。
スマートフォンの普及により、人々の情報収集はインターネットが主流となりました。店舗で実物を見ても、その場では買わず価格や口コミを調べてから購入するケースも多く見受けられます。つまり、1人の消費者が1つの商品を購入するにあたって複数のチャネルに目を通すようになったということです。
こうした消費者行動の変化を受け、企業には消費者のニーズに即した販売戦略が求められました。ユーザーが購入したいと思ったチャネルで、すぐに購入することができる販売戦略、すなわち「オムニチャネル化」の重要性が高まってきています。
テクノロジーの発展
オムニチャネルが注目を集めたもう1つの理由は、テクノロジーの発展です。
技術が進歩し、ユーザーの行動を従来に比べより正確に測定できるようになったことで、マーケティングへの活用が広がりました。チャネル間で正確に情報共有をおこない、ユーザーにとってより最適化された情報を届けることが求められています。オムニチャネルは、情報のパーソナライズが重要視される現代のマーケティングにおいて、複数の角度から集められ、統合された情報は企業にとっても大きな価値を持っています。
こうした「消費者行動の変化」と「テクノロジーの発展」という2つが近年のオムニチャネルに対する注目を集めたといえるでしょう。
マルチチャネルやO2Oなどとの違い
ここまでオムニチャネルについて述べてきました。ここでは、「ほかのマーケティング戦略と何が違うの?」「似た言葉が多くてわからない」といった方向けに、よく混同されるマルチチャネルやO2Oといった似た言葉との違いを紹介します。
マルチチャネルとの違い
マルチチャネルとは、複数のチャネルを用いてユーザーの求める商品・情報を届けるマーケティング戦略です。ただしマルチチャネルにおける複数のチャネルはそれぞれが独立しており、連携はしていません。こうしたチャネル間の独立がオムニチャネルとの一番の違いです。例えば、実店舗でよい商品を見つけたが、サイズがなく結局自分でインターネットから購入した、というケースはマルチチャネルに該当します。
マルチチャネルについての詳細はブログ記事「マルチチャネルの仕組みとは?オムニチャネルとの違いや導入・活用方法について解説」をご覧ください。
クロスチャネルとの違い
クロスチャネルとは、顧客管理システムや在庫管理システムなどを導入し、複数のチャネル間で情報を共有させ、ユーザービリティを高めるマーケティング戦略となります。クロスチャネルとオムニチャネルが大きく異なる点は、チャネル間のUX(顧客体験)が均一化されているかどうかという点です。
例えば、実店舗で在庫切れの商品をその場で購入したが自宅への発送ができないケースや、実店舗で貯まったポイントがオンライン上では使用できないケースは、チャネルによって体験が異なるためユーザーからすると別のサービスを利用しているように感じてしまいます。
O2O(online to offline)との違い
O2O(online to offline)とは、オンラインからオフラインへと顧客を誘導するマーケティング戦略のことです。
例えば、ECサイトを利用するユーザーに実店舗で使用可能なクーポンやお得情報を付与することはO2Oに分類されます。オムニチャネルとの大きな違いは誘導するかどうかという点です。オムニチャネルはオンラインとオフラインの境をなくす戦略のため、顧客の誘導を積極的にはおこないません。
O2Oについての詳細はブログ記事「【店舗運営者必見】オンラインから集客するO2Oマーケティングとは?メリットや手法・成功事例をご紹介!」をご覧ください。
OMO(online merges with offline)との違い
OMO(online merges with offline)とは、オンラインにオフラインを併合する戦略を指します。OMOにおいては食事や移動といった、従来までオフラインだったものもすべて活用可能な情報として管理されます。
OMOとオムニチャネルとの大きな違いは軸とするポイントにあります。オムニチャネルがオンラインとオフライン両方を基軸に二者の境界をなくそうとする戦略であるのに対し、OMOはオンラインを基軸とし、オンラインにオフラインを取り組もうとする戦略です。両者の施策には似たものが多いですが、方向性において大きな違いがあります。
OMOについての詳細はブログ記事「OMOとは?~オンラインとオフラインを融合したマーケティング戦略~」をご覧ください。
オムニチャネルのメリット
ここでは、実際にオムニチャネルを導入した際に期待されるメリットを紹介します。
顧客満足度の向上
オムニチャネル導入のメリットとして第一にあげられるのは、顧客満足度の向上です。実店舗などのオフラインと、ECサイトやインターネットショップといったオンラインをシームレスにつなぐことで新しい顧客体験を創造し、顧客満足度を向上させることができます。
オムニチャネル導入によって、実店舗に求める商品の在庫がない場合でもユーザーの手を煩わすことなく、購入・受け取りが可能になります。
顧客1人ひとりへの一貫したマーケティング
オムニチャネルを導入することによって、各チャネルにおけるユーザーの行動が個人に紐づいて管理されます。そのためチャネルを超えて、一貫性を持ったアプローチが可能になります。こうした一貫性はユーザーの購買意欲を高めるだけでなく、チャネルごとに分断されていることで生じるストレスの削減にもつながります。
業務効率化
オムニチャネル化によって顧客情報や在庫情報を一元化することで、それらの管理がより効率的になります。
特に、複数のECサイトへの出店や複数のインターネットショップを運営している場合、一元的な管理は販売機会損失の防止や廃棄削減などのコスト削減にも役立ちます。また受注などの業務も一元的におこなうことで工数削減も可能です。
こうした業務効率化は作業に対する時間的コストも削減し、素早い対応は結果的に顧客満足度の向上にもつながります。
オムニチャネルのデメリット・注意点
オムニチャネルのメリットについて上述しましたが、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、オムニチャネル導入時のデメリットや注意点を紹介します。
オンラインと実店舗のカニバリゼーションの可能性
オムニチャネル導入時に気を付けなければいけないことが、実店舗とオンラインの競合化です。両者をシームレスに連携させたことで、実店舗のユーザーがオンラインに流れてしまい、実店舗がショールーム化してしまうケースがあります。
オムニチャネル化を計る際はオンライン上のチャネルのみに注力するのではなく、実店舗との関係や実店舗の役割、各チャネルとユーザーがどのように接しているかなど多角的な観点から施策を進めることが必要になります。
顧客認知の難しさ
オムニチャネルの大きな課題として顧客認知の難しさがあげられます。現在、ECサイト市場は競合が多く存在しており、オムニチャネル化はそうした過酷な場に参入するということでもあります。
そのため導入時には実店舗のユーザーに対してオンラインチャネルの認知を進める施策が必要になります。具体的には、オンライン上での広告やSEOといった施策が有効です。
オムニチャネルの成功事例
実際にオムニチャネル化が成功した事例にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、日本国内でのオムニチャネル化の成功事例を大手企業事例2件、中小企業事例1件の計3件紹介していきます。
無印良品
無印良品ではオムニチャネル専用アプリとして、「MUJI passport」を運営しています。このアプリにはキャンペーン情報の発信やインターネットショッピング機能のほか、店舗でためることができるマイレージ機能が存在します。
また、位置情報を用いたチェックイン機能も存在し、実店舗への来店を促す施策が多いことが、無印良品のオムニチャネル化成功のポイントだといえます。
画像引用元:無印良品|MUJI passport
ABC-Mart
ABC-Martではオムニチャネル化施策として、ECサイトで選んだ商品を実店舗で試着・購入できる「店舗受け取りサービス」をおこなっています。
実店舗の出店戦略として、同一圏内に複数出店することで、在庫切れなどにもほかの店舗がカバーできる仕組みを作っています。また、店頭のタブレットからECサイトの在庫確認と自宅配送をおこなうことができる「iChock(アイチョク)」というサービスを導入しています。
画像引用元:ABC-Mart|店舗受け取りサービス
TMIX
WebでTシャツをデザインし注文ができるTMIXは、オムニチャネル化施策として在庫を持たないショールームをOPENしました。インターネット上ではわからない、サイズ感や質感を実際に感じることが可能です。
ショールームでは在庫を持たず、購入の場合は店頭のタブレットから購入し、商品は自宅に発送されます。元々、WebでのチャネルのみだったTMIXですが、この施策によりオフラインからのチャネルを獲得することができました。
画像引用元:http://blog.tmix.jp/showroom/newshowroom/(TMIX|TMIXブログ|ショールーム)
オムニチャネル導入時の流れ
実際にオムニチャネル化を進めるにあたって、どのような手順を踏むのでしょうか。ここでは、オムニチャネル導入までの4つのステップを解説します。
環境分析とカスタマージャーニーの作成
まず1番最初におこなうのは現状把握です。自社の顧客がどのチャネルから商品を購入しているか、競合のオムニチャネル施策にはどういったものがあるかを調査し把握します。
また、特に重要視すべきなのが消費者行動についてです。顧客が情報をえる場所やその内容、どのような経路で購入にいたるのかを明確にする必要があります。ここでおすすめするのがカスタマージャーニーの作成です。事実に基づいた調査から顧客行動を可視化することで、より明確に顧客行動を理解することができます。
カスタマージャーニーについての詳細はブログ記事「カスタマージャーニーとは?誰でもできるカスタマージャーニーマップの作り方!」をご覧ください。
社内での意識共有
自社や周囲の環境、顧客行動を理解したあとにおこなうのは全社的な意識共有です。オムニチャネル化は自社の環境によりおこなうべき施策が変わってきます。
例えばECサイトを持っていない場合はECサイトを作るところから始める必要があり、顧客管理・在庫管理システムの有無なども確認しなければなりません。
こうした新しいシステムや体制の導入には多くの課や社員が関わります。全社的に目標を定め、オムニチャネル化への意識を共有することで部署や課を超えた改革が可能になります。
またこの際に、部署ごとの利益配分を決めることが好ましいでしょう。オムニチャネル化が進むと部署を超えた販売活動がおこなわれるため、あとから混乱しないように明確なルールを定めなければいけません。
チャネル間でのデータ連携
上述までの土台が整ったら、いよいよオムニチャネルの肝となる各チャネルのデータ統合をおこないます。実店舗・ECサイトの売上、各店舗の在庫状況、顧客の購買履歴など過去から現在に至るまですべての情報を統合していきます。こうした網羅的な統合がオムニチャネルにおける、購入のスムーズさや提供する情報の質・一貫性につながります。
ただし、データの統合は、従来までばらばらだったシステムを1つにする必要があり、場合によっては新しいシステムを導入しなければなりません。そのため慎重に進める必要があります。
効果検証
各チャネルをうまく統合し、一元的なデータ管理をおこなえたとしても想定した通り正常に働いていなければ意味がありません。すべてのシステム統合後、想定通り稼働できているか確認しましょう。
具体的におこなうのがカスタマージャーニーの効果検証です。オムニチャネル化後の顧客行動と事前に想定したカスタマージャーニーを照らし合わせ、想定外の動きをしていた場合修正する必要があります。
成功のポイント
上述のステップのなかでオムニチャネル化を成功させるポイントは2つあります。
1点目は、全社的な意識統一です。オムニチャネル化は、新しくおこなうことが多く、その領域もとても広いものとなっています。そのため、スムーズなオムニチャネル化をおこなうためにも、変化後のビジョンをしっかりと共有し、社全体で進めていくことが重要です。
2点目は、上述のPDCAサイクルを何度も回していくことです。テクノロジーの発展にともない、移り変わりの激しいデジタルマーケティングでは「昨日正しかったことが、今日正しいとは限らない」とまでいわれています。そのため1度のオムニチャネル化で終えるのではなく、そこからPDCAサイクルを回し、常に時代に即したシステムを作り続けることが重要です。
まとめ
今回は多くの注目を集めているオムニチャネルについて解説しました。オムニチャネル化は大きなメリットがあるものの、一朝一夕でできるものではなく、ある程度の期間が必要になってきます。まず一歩、明日からでもできることを始めてみてははいかがでしょうか。
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