Googleの「AI Overviews(AIOs)」出現で何が変わった？美容サイトへの影響をクリック率分析解説

2024年8月以降、Googleの検索結果画面における「AIによる概要（AI Overviews／AIOs）」の出現が確認されるようになりました。AIOsは、ユーザーが検索するキーワードに対して、検索意図をAIが理解したうえで生成した要約回答を検索結果上部に表示する機能です。

検索ユーザーにとってはページに遷移せず疑問を解決できるようになった一方、サイトへの流入に影響を与えているケースも少なくありません。本記事では「美容医療」領域における実態を例に、ユーザーの行動変化を調査・分析します。

AIOs調査の分析方法と目的

本調査では、AIOs出現前後での美容医療サイトのクリック率変化を次の2軸で分析しました。

• 掲載順位・表示回数は大きく変わっていないのにクリック率が低下したキーワード
• AIOsが出現してもクリック率を維持・上昇させたキーワード

調査の目的は、AIOsの出現によって美容医療サイトにおける検索ユーザーの行動や意図がどのように変化したのかを可視化することにあります。

従来のSEO分析では、掲載順位の変動や表示回数の推移からクリック数の増減を捉えることが一般的でした。しかし、AIOsが検索結果画面上部に表示されるようになったことで、順位や表示回数に変化がなくてもクリック率が下がるケースが散見されるようになっています。

そこで本調査では、クリック率の変化がどこから生じているのかを明らかにすべく、次のポイントに着目して整理しました。

• クリック率の低下が「検索順位の変動」ではなく、AIOsによる検索結果の構造変化 によって起きているのではないか
• AIOsが表示されることで、ユーザーが検索結果ページ内で完結してしまう行動がどの程度起きているのか
• 逆に、クリック率を維持・上昇させたキーワードにはどんな特徴があるのか

AIOs出現後のクリック率の変化傾向

本調査では、2024年8月と2025年8月の検索データを比較し、「順位や表示回数に大きな変動がないにもかかわらず、クリック率のみに変化が見られたキーワード」を抽出しました。

全22,258キーワードのうち、クリック率が低下したものは33キーワード、クリック率を維持または上昇させたものは75キーワードでした。

このうちAIOs（AI Overview）が検索結果画面に出現していた割合は、

• クリック率低下キーワード：約60.61％（20/33キーワード）
• クリック率維持・上昇キーワード：約56.00％（42/75キーワード）

となり、いずれのケースでもAIOsがクリック率変化の要因として一定の影響を与えていることがわかりました。

AIOs出現によってクリック率が低下したキーワードの特徴

クリック率が低下した33キーワードのうち、6割以上（60.61%）でAIOsの出現を確認しました。 これらのキーワードには以下のような特徴が見られました。

＜悩み系（症状・原因・対処方法）キーワード＞
例：「ワキガ グレープフルーツ」「陰部 ティッシュがつく」など

これらのキーワードは、悩みに対する回答が明確で、AIOsに表示される回答だけでユーザーの悩みが解決しやすい傾向があります。 その結果、AIOsの回答を読んだユーザーが満足し、クリックせずに離脱するため、クリック率が低下したと考えられます。

＜How to系キーワード（手順・期間・効果など）＞
例：「鼻整形 ダウンタイム」「脂肪溶解注射 リニアハイフ」など
AIOsでは検索意図に対する要点がリスト形式で整理されて表示されるため、概要だけを知りたいユーザーは検索画面上で十分に情報を把握できてしまいます。その結果、わざわざサイトへ遷移して詳細を読む必要がなくなり、ページへ訪れるユーザーが減少した可能性が考えられます。

＜施術内容調査系キーワード＞
例：「顔 脂肪吸引」「シルファーム 値段」など
これらのキーワードは、施術ごとの料金や概要、機器の特徴など“まず知りたい基礎情報”がAIOs内で端的に整理されて表示されます。検索ユーザーの多くは、特定クリニックの詳細比較ではなく「施術そのものの基本情報」を知る段階で検索しているため、AIOsの回答だけで目的が完結しやすく、結果としてクリックせず離脱する傾向が強まり、クリック率低下につながったと考えられます。

上記のような結果から、検索意図が「明確で、回答が1つに定まりやすい」キーワードや、「まずは概要だけわかればよい」というユーザーが多いキーワードほど、ユーザーがAIOsの要約だけで目的を満たしやすく、結果としてクリック率が下がる傾向が確認されました

AIOsが出現してもクリック率を維持・上昇させたキーワードの特徴

クリック率を維持または上昇させた75キーワードのうち、AIOs出現キーワードは42件（56.0％）でした。 AIOsが存在してもクリック率が落ちなかったキーワードには、以下のような共通点があります。

＜悩み系（“自分に当てはまるか”を確認したい検索）＞
例：「服についたワキガの臭いを取る方法」「デリケートゾーン 洗っても臭い」など
AIOsは一般論に留まるため、ユーザーは自分の状況に近い具体例を求めて詳細が記載されたページをクリックする傾向にあることが考えられます。

＜施術内容の詳細調査系＞
例：「シルファーム 効果」「フラクショナルCO2レーザー 効果」など
これらのキーワードは、施術の「概要」だけでなく、症例写真や具体的な効果など実体験情報を求める傾向が強いのが特徴です。AIOsは費用相場や基本的な施術内容といった最低限の情報にとどまり、実体験情報を伝える症例データや医師コメントまではカバーできません。そのため、より詳細で信頼性のある情報を得るためにユーザーがページへ遷移しやすく、クリック率維持・上昇につながったと考えられます。

＜術後・経過観察系キーワード＞
例：「ダウンタイム 埋没 二重」「クマ取り 脱脂 ダウンタイム」など
これらのキーワードは、術後の実際の経過やダウンタイムの“実体験情報”を知りたいニーズが強いという特徴があります。AIOsは注意点や期間などの基礎情報は示せるものの、経過写真や個々の回復過程といった実体験までは提供できません。そのため、より具体的な情報を求めてユーザーがページをクリックしやすく、クリック率の維持・上昇につながったと考えられます。

＜部位特化型キーワード＞
例：「顎下脂肪溶解注射」「脂肪吸引 顎下」など
これらのキーワードは、特定の部位に対する施術効果や症例を知りたい検索ニーズが強いのが特徴です。AIOsは施術の基本的な説明にとどまり、部位別の効果や症例までは示されません。そのため、より具体的な情報を求めてユーザーがページへ遷移しやすく、クリック率の維持・上昇につながったと考えられます。

上記のような結果から、AIの表層的で一般論的な回答では満足せず、より幅広く深い情報を求める検索ユーザーが多い領域では、実際の症例・体験・医師監修情報を提供するサイトがクリック率を維持・上昇させていることがわかります。

調査結果から読み解く”美容医療サイトの現状”

今回の分析から、AIOs出現後のクリック率変化には明確な傾向が見られました。ポイントを整理すると以下の通りです。

• 美容医療業界でもAIOsの影響が広がってきている
• 影響が出やすい領域と出にくい領域が明確
• 検索意図が浅く、要点だけで満足できるキーワードほどAIOsで完結しやすく、クリックされにくい
• 答えが1つではないキーワードや、一般論では満足できない検索ニーズの領域では、AIOsでは満足できずクリック率が下がりにくい
• ユーザーは体験談や幅広い情報、より深い情報に触れることを求めている

特に、美容医療領域においては「施術効果のリアルさ」「経過の透明性」「医師監修の信頼性」といった要素が、AIOsに代替されにくい価値として浮き彫りになりました。

今後は、単に情報を網羅するだけでなく、AIOsでは再現できない人の経験や専門性をコンテンツとしてどう表現するかがクリック率維持の鍵になると考えられます。

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