化粧品を販売する事業者において、薬機法の概要や注意点に関する理解を深めるのは非常に重要です。これらは、ブランドサイトやオウンドメディア、SNS、LPなど、どのような集客手法を用いる際でも共通になります。
しかし、実際に上記のような集客に取り組もうとしても、化粧品に関する概要が分からずに苦労している方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、薬機法における化粧品の定義をはじめ、禁止されている表現や知っておくべき8つのポイントを解説します。また、NG表現の代表例もご紹介しますので、安心して集客をするためにもぜひ参考にしてください。
目次
薬機法とは?
まずは、薬機法の概要について解説をします。薬機法とは「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」において、商品の安全性及び有効性を確保するための法律のことであり、旧名は「薬事法」です。
薬機法は、何も商品を提供している事業者のみならず、販売に関わるすべての人間に関係する法律になります。そのため、仮に製造段階で何も問題がなかったとしても、第三者が販売しているLP(ランディングページ)などで違反が見つかった場合、販売者と製造者双方が罰則を受けることになります。
薬機法は、商品を手に取る顧客の安全性を守るためのものです。そのため、商品に関わるすべての人間が適切な知識を持ってそれぞれの役割を果たすことが大切です。
薬機法における化粧品の定義
化粧品と一口に言っても、薬機法で定義されている内容と、一般の方が捉える内容に少々乖離があるケースは多々あります。しかし、当然ながらそのような状態では、顧客の安全性や商品の有効性を適切に証明することはできません。
薬機法では、化粧品を下記のように定義付けています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
第2条3項
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
これらは、歯磨きやシャンプーなどの商品が含まれるほか、口紅、美容液、ファンデーションなども当然含まれます。さらに、化粧品の中には「医薬部外品(薬用化粧品)」に該当するものが含まれることも特徴です。
医薬部外品とは、厚生労働省の承認を受けており、なおかつ予防・衛生を目的に製造、販売され、厚生労働省が認めた効果や有効成分が含まれている化粧品のことを指します。ただし、化粧品の中の医薬部外品に関しては、万が一違反した場合は化粧品とは異なる罰則を受ける点に関しては理解しておきましょう。
化粧品に関する薬機法で禁止されている表現
薬機法における化粧品では、禁止されている表現が複数存在します。例を挙げると下記のとおりです。
- 誇張・誇大表現
- 確実性を伝える表現
- ビフォー・アフターに関して
それぞれ順番にご説明します。
前提の解釈基準
薬機法で禁止されている表現を理解する前に、前提として、薬機法の解釈基準(広告表現)に関して知っておく必要があります。厚生労働省では、局長通知という形で上記に関して定めており、「医薬品等適正広告基準」というものが存在します。
こちらでは、消費者に誤解を与えてしまう広告表現は不適切であり、罰則の対象となるとされています。たとえば、分かりやすいもので言えば「特定の病気が治る」と表現したり、「痩せる」と明言したりしてしまうなどが挙げられます。
結論、消費者に誤解を与える表現をしないことが、薬機法の広告における前提条件だと捉えておきましょう。
誇張・誇大表現
誇大表現は、化粧品に関する薬機法で罰則の対象です。たとえば、競合他社と比較して自社の商品にはない効果が存在すると謳ったり、絶対に安全な商品などと訴求したりすることが挙げられます。
(6)効能効果等又は安全性についての最大級の表現又はこれに類する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現をしてはならない。
上記のように、化粧品では最大級の表現は使用してはならないとされています。ただし、業界の中でも「売上No.1」など、客観的事実が存在する場合は、それらの出典元を明記すれば使用しても構いません。
確実性を伝える表現
上述した内容と似ているように感じるかもしれませんが、安全性を確認済み、老若男女問わず絶対に使用できるなど、確実性を伝える表現は使ってはいけません。基準としては、万人に確実性や安全性があるなどの表現をしてはならないとされています。
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
<共通>
(1)効能効果等又は安全性の保証表現について
例えば胃腸薬の広告で胃弱、胃酸過多等の適応症をあげ、それが「根治」、「全快する」等又は「安全性は確認済み」、「副作用の心配はない」等の表現を用い、疾病の要因、患者の性別、年齢等の如何を問わず効能効果が確実であること又は安全であることを保証するような表現は認められない。なお、効能効果等又は安全性を保証する表現については、明示的、暗示的を問わず認められない。
なお、商品の効果効能や信頼性を高めるため、使用者の声として体験談を記載することも認められていません。これらは、消費者に「自分にも当てはまるかも」と誤解を与えてしまう恐れがあるためです。
ただし、香り等のイメージや使用方法に関しては、事実に基づく範囲であれば使用しても構いません。また、効果効能や安全性に関しては当然ながら誤解を与えてしまう恐れがあるため、使用者の声が存在したとしても掲載してはいけません。
ビフォー・アフターはOK
元々、化粧品を使用した前後のビフォー・アフターに関しては、掲載が認められていませんでした。しかし、2017年9月に「医薬品等適正広告基準」が改正され、適切な基準を満たせば使用しても良い形に変わりました。適切な基準とは、安全性を保証するような表現をしたり、効果効能から大幅に漏れた表現をしたりしないことです。つまり、ビフォー・アフターを通して、消費者に誤解を与えない表現であれば掲載が認められています。
とはいえ、このあたりの判断基準に関しては、薬機法に知見のない方が判断するのは非常に危険です。そのため、薬機法に詳しいコンサルティング会社への監修依頼や、コンテンツの制作自体を依頼したほうが確実に安全だと言えるでしょう。
化粧品における薬機法で知っておくべき8つのポイント
本記事で解説しているとおり、化粧品における薬機法は細かく条件が定められており、注意するべき点が複数あります。そこでここからは、化粧品における薬機法で失敗しないために、知っておくべきポイントを8つご紹介します。
- 化粧品の標ぼう表現から漏らさない
- 効果効能を謳わない
- 安全性を保証する表現はしない
- 最大級の表現をしない
- 誤解を与える体験談は記載しない
- 自社サービスの優位性は示さない
- 不安を煽る広告はしない
- 推薦行為を行わない
それぞれ順番に見ていきましょう。
化粧品の標ぼう表現から漏らさない
化粧品における薬機法では、標ぼう範囲が決められています。結論、事実を超える表現をすることはできません。たとえば、シワ対策に効果的なスキンケア商品を販売する場合は、乾燥による小ジワを目立たなくさせるという表現は標ぼう範囲になります。一方で、小ジワがなくなる、美しい肌(美肌)を手に入れるなどの表現は認められていません。
したがって上記のように、化粧品の標ぼう範囲から漏れた表現をしないように注意することが大切です。
効果効能を謳わない
化粧品では、効果効能を謳ってはいけません。
第4(基準)3(5)効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない。
<共通>
(1)効能効果等又は安全性の保証表現について
例えば胃腸薬の広告で胃弱、胃酸過多等の適応症をあげ、それが「根治」、「全快する」等又は「安全性は確認済み」、「副作用の心配はない」等の表現を用い、疾病の要因、患者の性別、年齢等の如何を問わず効能効果が確実であること又は安全であることを保証するような表現は認められない。なお、効能効果等又は安全性を保証する表現については、明示的、暗示的を問わず認められない。
たとえば「血行を促進する」「アンチエイジング」などは、化粧品の効果効能を超えているためNGです。アンチエイジングなどの表現を用いたいのであれば、「潤いのある肌を手に入れるためのエイジングケア」など、化粧品で認められた効果効能の範囲内で表現するようにしましょう。
安全性を保証する表現はしない
安全性、確実性がある表現は認められていません。たとえば「これさえ使えば安心」「50代でも安心」などの表現です。年齢、性別、その他どのような理由があっても、安全性の保証は罰則の対象となるため注意しましょう。
最大級の表現をしない
「最高」「絶対」「他にはない」など、効果効能や安全性において、最大級の表現を用いることはできません。ただし上述したように、売上No.1など、効果効能や安全性に関係のない部分に関しては、調査期間や調査元を明記すれば使用は認められています。
誤解を与える体験談は掲載しない
効果効能や安全性に関して、誤解を与えてしまう体験談の掲載は認められていません。体験談の形で訴求をしてしまうと、消費者に誤った認識を与えかねないためです。しかし、先述した「香りのイメージ」や「使用方法」に関しては、使用した方本人の「感想の範囲」であれば認められています。ただし、これらに関しても「効果を保証するものではありません」など、誤解を与えない文言は確実に明記する必要があります。
自社サービスの優位性は示さない
競合他社と比較して、自社商品の優位性を示す広告も禁止されています。また、当然ながら他社商品の誹謗中傷も認められていません。たとえば「競合他社にはない〇〇の製造方法を用いています」という表現や、「自社商品が最もエイジングケアに効果があります」などの表現は、気付かぬ内に使ってしまう恐れがあるため注意しましょう。
不安を煽る広告はしない
消費者が「恐怖」を感じてしまうような、不安を煽る広告も禁止されています。
第4(基準)12 不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある広告の制限
広告に接した者に、不快、迷惑、不安又は恐怖を与えるおそれのある表現や方法を用いた広告を行ってはならない。特に、電子メールによる広告を行う際は、次の方法によらなければならない。
(1)医薬品販売業者の電子メールアドレス等の連絡先を表示すること。
(2)消費者の請求又は承諾を得ずに一方的に電子メールにより広告を送る場合、メールの件名欄に広告である旨を表示すること。
(3)消費者が、今後電子メールによる広告の受け取りを希望しない場合、その旨の意思を表示するための方法を表示するとともに、意思表示を示した者に対しては、電子メールによる広告の提供を行ってはならないこと。
したがって「すでに肌が衰えているあなたへ」など、消費者が不安、不快感、嫌悪感を示すような訴求は避けましょう。
推薦行為を行わない
医薬関係者、病院、クリニック、学校など、消費者の認識に誤解を与えてしまう可能性が高い者からの推薦行為は禁止されています。
第4(基準)10 医薬関係者等の推せん
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。
なお、美容に関する専門家による推薦行為は、ただちに違反行為とはみなされないとされているものの、効果効能や安全性に関する言及をしていないかは都度確認することが大切です。
化粧品の薬機法におけるNG表現の代表例
ここまで、化粧品の薬機法において知っておくべきポイントを解説しました。最後に、NG表現の代表例を3つご紹介します。
- ~が必ず改善します
- 肌荒れが治ります
- ~が消えます
それぞれ順番に見ていきましょう。
~が必ず改善します
「必ず」や「改善します」と、明確に絶対的な表現をすることは禁止されています。改善することに関する効果効能を謳うことは違反であるため、十分留意して取り組みましょう。
肌荒れが治ります
肌荒れが治りますに関しても、化粧品としての効果効能を超える範囲であるためNGです。基本的に、薬機法においてはどのような商材であっても、~が治るという表現を使用してはいけません。
~が消えます
シミが消えます、ニキビが消えますなどの表現もNGです。ただし、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」という表現は化粧品において認められているため、適宜ガイドラインを確認しながら進めましょう。
まとめ
本記事では、化粧品における薬機法の概要について解説をしました。化粧品では、認められている標ぼうから逸脱した表現をしたり、安全性や確実性を保証する表現をしたりしてはいけません。他にも、不安を煽るような広告や、消費者に誤解を与えるような広告は禁止されています。
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